時系列予測の手法別解説
【EPA法(1/3)】
解析手法の役割
EPA法は、『Economic Planning Agency method』の略で、アメリカ商務局のCENSUS局法(センサス)を我が国の経済企画庁が日本向けに改善、開発した方法です。
EPA法は、月次あるいは四半期の時系列データ(TCSI)から、TCI、TC、S、Iの変動要素を導く解析手法です。
TCSIからTCI、TC、S、Iを導く方法として次を説明しました。
S → TCSIに月別平均法を行い、Sを算出
TCI → TCSI÷S
T → TCIに加重移動平均を行ってTCを算出
I → TCI÷TCでIを算出
TCI → TCSI÷S
T → TCIに加重移動平均を行ってTCを算出
I → TCI÷TCでIを算出
適用できるデータ形態と時期数
月次または四半期の時系列データに適用でき、年次データや日別データには適用できません。
月次データの月数は36ヵ月以上、四半期データの期数は12期以上です。
●留意点
EPA法はCENSUS局法の中の特異項の検定・補正など、必ずしも必要でない計算手順を省略し、簡略化しています。それでいてCENSUS局法とほぼ同程度に精密なTCSI分離の分析ができます。
EPA法は分析に必要なデータ期間は3年以上で、CENSUS局法の4年以上に比べて短い期間に適用できるという特徴をもっています。
なお、EPA法にもいくつかの解法がありますが、ここではEPA-X4Cについて計算の仕方を紹介します。
乗法モデルと加法モデル
EPA法には乗法モデルと加法モデルの2つがあります。
①乗法モデル TCSI=TC×S×I
②加法モデル TCSI=TC+S+I
②加法モデル TCSI=TC+S+I
(例)
乗法モデル TCSI=TC×S+I
1200円=1000円×1.25×0.96
加法モデル TCSI=TC+S+I
1200円=1000円+250円-50円
乗法モデルと加法モデルとの差は、原系列TCSIをTC,S,Iに分離する際に、割り算によるか、または引き算によるかの差です。すなわち、乗法モデルでは移動平均以外の計算は主として掛け算・割り算を使用しており、これにより得られたSはいわゆる「季節変動指数」であり、原系列をこの指数で割れば、季節変動が除去された季節変動調整済系列となります。
一方、加法モデルは主として、加減算を使用して計算しており、これにより得られたSは「季節変動量」であり、これは季節変動の絶対量を示します。従ってこの場合は原系列の値から、この「季節変動量」を差し引けば季節変動調整済系列が得られます。
注:原系列(TCSI)に負(マイナス)のデータがある場合、乗法モデルは適用できません。
EPA法の結果
医療機器販売台数にEPA法を適用しました。右はその結果です。
EPA法は通常、乗法モデルを用いるので、ここでは乗法モデルの結果を表記します。
EPA法からわかること
<TCI>
季節の影響を除去した医療機器販売台数の傾向がTCIでわかります。
医療機器販売台数の傾向は、2005年に増加から横ばい傾向に転じたが、2007年には再び増加傾向となった。しかしながら2007年後半、増加の勢いが鈍くなっていることに留意したい。
<TC>
季節変動や不規則変動を除去した医療機器販売台数の傾向がTCでわかります。
TCは個々の年より、全ての期間を通しての傾向を見ることを主とします。
医療機器販売台数の3年間における傾向は、途中で横ばい状態があったものの増加傾向にあるといえる。
<S>
医療機器販売台数の季節変動がわかります。
医療機器販売台数は毎年3月に売れ、8月に売れないといえる。
<I>
医療機器販売台数の変動は傾向変動、季節変動、不規則変動などさまざまな要因の影響によって変動しています。Iはその中で、法規税制の改定やキャンペーン有無などの不規則変動要因の影響を把握できます。
医療機器販売台数は2006年1月に改良品を発売し、その影響で販売台数は売れた。2006年12月に欠陥品が発生し、その影響で販売台数の売れ行きは落ちた。2007年3月に大々的なキャンペ-ンを実施したところ、その影響度は大きく、欠陥品発生以来落ち込んでいた売上は回復した。
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