◆母平均の差の検定(5/6)◆
11. 両側検定と片側検定
「5 母平均の差の検定の手順」で、最初にすることは帰無仮説と対立仮説の2つをたてることだと、説明しました。
おさらいします。
①帰無仮説
「等しい」という仮説をたてる。
【例】母集団の「新薬Yの対か体温平均値と従来薬Xの低下体温平均値は等しい」
②対立仮説
「異なる(解熱効果がある)」という仮説をたてる。
【例】母集団の「新薬Yの低下体温平均値と従来薬Xの低下体温平均値は異なる(解熱効果がある)」
対立仮説において、「異なる」でなくて、(高い)あるいは「低い」という仮説をたてることがあります。
上記の例では、母集団の「新薬Yの低下体温平均値は従来薬Xの低下体温平均値より高くなる」といった仮説です。
対立仮説が、「異なる」がいえるかを判断する検定方法を両側検定といいます。
対立仮説が、「高い」あるいは「低い」がいえるかを判断する検定方法を片側検定といいます。
両側検定と両側検定を紹介しましたが、特に理由がないかぎり,片側検定は使いません。
新薬Yは従来薬Xより解熱効果が高いと信じることは悪いことではありませんが、調査をするまでは新薬Yが従来薬Xより解熱効果が高いという情報がないのが通常です。したがって新薬Yは従来薬Xより解熱効果が高いという片側検定は望ましくないと思います。
事前情報がない場合は、「新薬Yと従来薬Xの解熱効果は異なる」の対立仮説を用います。
片側検定におけるP値と棄却限界値の求め方
両側検定、片側検定の解析手順は同じですが、P値と棄却限界値の算出で違いがあります。
【P値の求め方】
求められたP値の半分(÷2)をP値とします。
【棄却限界の求め方】
棄却限界値の計算をExcelの関数で行う場合、有意点の2倍とします。
2×有意点における棄却限界値を示します。
「10(1)」の表について両側検定と片側検定をしました。
このテーマは対応のあるt検定で、投与前と投与後の比較です。
両側検定 Bについて見ると、T値=棄却限界値、P値=0.05で
対立仮説「投与前体温平均値と投与後体温平均値は異なる」は採択できず効果があるといえません。
片側検定 Bについて見ると、T値>棄却限界値、P値<0.05で
対立仮説は「投与前体温平均値は投与後体温平均値より高い」は採択でき、効果があるといえます。
12. 対応のあるt検定_演習
【問題】
ある大手進学塾は、記憶術が記憶力を高めるのに役立つかを調べるために、200人の塾生を対象に、記億術を学習する前と学習した後で記憶力テストを行いました。
テストは100個の単語を5分間で暗記させました。テスト終了の5分後にいくつの単語を覚えているかを調べました。
下記データを解析し、記憶術の学習前と学習後で記憶個数平均値に違いがあるかを調べなさい。
解答
・データタイプ
同じ塾生の比較なので対応のあるデータ
・サンプルサイズ
n=200、100以上なので母集団での正規性の確認は不要
・適用する検定手法
対応のあるt検定
・帰無仮説
記憶術の学習前と学習後で記憶個数平均値は同じ
・対立仮説
記憶術の学習前と学習後で記憶個数平均値は異なる
記憶術の効果はある
両側検定で行う
・計算
・解釈
記憶個数平均値は、学習前が25.2個、学習後が29.3個で、差分平均値は4.1個を示した。記憶術の学習によって、1人当りの記憶個数は4個増えたことになる。
母集団における記憶個数の差分平均は、信頼度95%で3.7個から7.8個の間にあるといえる。
P値=0.0000<0.05より、帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択できる。
母集団において信頼度95%で、記憶術の学習前と学習後で記憶個数平均値は異なる。すなわち、記憶術の効果はあったといえる。
アイスタット社のフリーソフト「Excel統計解析」で演習問題を解きます。
対応のあるt検定を選択します。
実行ボタンを押すと下記が表示されます。
比較するデータの2列を項目名(ラベル)から範囲指定します。
分析実行を押すと、上の結果が出力されます。
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