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《共分散構造分析(1/3) 》

1. どのような手法か

共分散構造分析は、分析者が質問項目間の因果関係について仮説をたて、これが正しいかどうかを検証する解析手法です。仮説は項目間を矢印で結んだパス図と呼ばれる図で表します。分析を行うことにより、項目間の関係の強さを表すパス係数と呼ばれる値が求められ、パス図の矢印線上に記載します。

分析者が考えたパス図の一例を下記に示しました。


このパス図に共分散構造分析を適用すると下記のようにパス係数が求められます。

「共分散構造分析」という名称は、Covariance Structure Analysisを訳したものです。「共分散構造分析」という名称は「共分散」や「分散」を連想させますが、この手法での本論でないので「構造方程式モデリング」と呼ばれる傾向にあります。「構造方程式モデリング」という名称は、Structural Equation Modelingを訳したものです。頭文字をとって「SEM」と呼ばれることもあります。
2. 相関関係と因果関係

相関関係と因果関係は異なります。因果関係があれば必ず相関関係は認められますが、相関関係があるからといって必ずしも因果関係は認められません。このことを具体例で考えて見ましょう。

小学生の身長、体重と読める漢字の個数の関係を調べました。相関係数は高い値を示しましたが、これだけで両者に因果関係があるといってよいでしょうか。この場合、第3の項目として学年を絡める必要があることが予想されます。

* 学年が上がれば読める漢字の個数は増えます。
* 学年が上がれば身長は高く、体重は重くなります。
* 学年の影響を受けて、身長は高く、体重は重くなれば読める漢字の個数は増えます。
相関係数が高い値を示しましたが、これは見かけの相関であり、因果関係はないことが予想できます。

パス図を作成して矢印線上に相関係数を表記しました。

A) 体重と読める漢字の個数の相関0.94は、「学年が上であれば体重は重い」の影響を受けて高くなっている。
    この相関は偽(見かけ)の相関で、両方に因果関係はない。
C) 身長と読める漢字の個数の相関0.94は、「学年が上であれば身長は高い」の影響を受けて高くなっている。
    この相関は偽(見かけ)の相関で、両者に因果関係はない。
B) 学年と漢字の個数との相関0.97は真で、両者に因果関係がある。

因果関係を調べるために共分散構造分析を行いました。
身長、体重と読める漢字の個数とのパス係数の値は低く両者に因果関係がない、学年と漢字個数とのパス係数は高く両者に因果関係があることがわかりました。
3. パス図を描くうえでのルール
 パス図を描くうえでのルールがあります。
  • アンケート調査より集められたデータを観測変数といいます。
      パス図では観測変数を四角で表現します。
         
  • アンケート調査では回答データとして得ることはできなかったが、実際には存在するに違いないデータのことを潜在変数といいます。
     因子分析のところで述べた文系能力、理系能力が潜在変数です。
     パス図では潜在変数を楕円で表現します。
  • 原因と結果は矢印で結びます。矢印の始点、終点では始点側を原因項目、終点側を結果項目とします。
    原因項目相互の因果関係を見る場合、その項目における人々の行為が時間的に前にある項目を始点側にします。
  • 2項目間が関連していると考えられる場合はそれらを双方向の矢印で結びます。
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