カプランマイヤー法

◆カプランマイヤー法(3/3) ◆

3. カプランマイヤー法の生存曲線を描いてみる                

 いよいよ前回の表を基にグラフを作ってみましょう。生存曲線のグラフというと難しいと思われる方も多いかもしれませんが、今回のように簡単なデータから取り組み、自身で描いてみれば、カプランマイヤー法の生存曲線がきちんと理解できるようになります。

必ず下り階段状になる生存曲線

 もう一度、前回計算した累積生存率の表をみてみましょう。
下表が、観察期間8ヵ月間の患者数10人の「死亡」「打ち切り」を調べ、累積生存率を算出したものです。

まず時期を横軸、累積生存率を縦軸にとり、値をプロットしてみましょう。そして、プロットする際の記号に「●」や「×」を使ってください。この時の「●」「×」には、ルールが決められています。その時期に死亡が1例でも出現した場合は「●」、打ち切りが出現した時期は「×」です。その時期に死亡と打ち切りの両方が出現した場合は死亡を優先します。そして、0ヵ月は全員生存しているので生存率は100%で、その時の記号は「■」とします。









次に進みましょう。「■」あるいは「●」を始点に、横線を引きます。終点は次の●がある時期です。















そして縦線を引き、すべての線を結べば、生存曲線の出来上がりとなります。

プロットされる点が多い場合は?

 プロットされる点が多い場合は、「●」や「×」を省略したり、すべて「■」で描く場合もあります。 


 誰かが死亡するまでは、生存患者の数は一定になります。プロットした線は、階段の踏面(フミズラ)状態、そして、死亡者が出現するとその時期は階段の蹴上(ケアゲ)状態になるということです。
 ここで1つ注意するポイントがあります。各時期での対象患者数(n数)を、かならず記載しなければなりません。これは忘れてはいけないポイントです。
 カプランマイヤー法を理解するためにも、ぜひ一度、簡単なデータを使ってご自身でグラフを作成することをお勧めします。
 一般的に医療現場で平均生存期間として使われる値は、カプランマイヤー法の生存曲線で生存率がちょうど50%になる時期の累積生存率のことです。これを専門用語では「生存期間中央値」といいます。
 この事例での生存期間中央値は、観察後6ヵ月目ということになります。

4. カプランマイヤー法の生存曲線を比較する
 

いよいよ最後の確認ポイント!

 再度確認です。このデータの目的は何だったでしょう?
「重症心不全のような致死的な疾患に対する薬剤の治療効果を、治療後の生存期間の延びでみようとしたもの」でした。では、これから2つの群の生存曲線を比較する方法について勉強していきましょう。


“log-rank test”と“generalized Wilcoxon test”

 いろいろな検定方法の中で、生存曲線で2群間に有意な差があるかどうかを調べる検定方法では“log-rank test”と“generalized Wilcoxon test”が使われます。しかし、それぞれの名前や計算方法は、別の機会に学習するとして、どちらの検定でもp値が算出されるということだけ覚えておいてください。この重症心不全のデータの場合は、log-rank testを用いています。とにかくp値にだけ着目してください。
 p値の判定ですが、p値が0.05以下であれば「母集団に違いがある」「有意な差がある」ということを表します。ですから今回のデータでいえば、log-rank testにおけるP値が0.0033で0.05より小さいので、製品A群とプラセボ群の生存曲線に違いがある、つまり有意な差があるといえることになります。これで「2群間の生存曲線に違いがある」と判定できるのです。


生存曲線のグラフに着目

 p値とともに生存曲線のグラフを見てください。生存曲線は、製品A群がプラセボ群より上側に位置しています。製品A群の生存率はプラセボより高く、製品A群の追加による生命予後の改善があったと解釈できるわけです。この解釈は研究に適用した1,251人の患者からなされたものですが、検定結果(=p値)によって、この解釈は別の患者についてもいえることになります。


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