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◆カプランマイヤー法(1/3) ◆

皆さんは、下図のような生存曲線をみたとき、この試験の結果をどのように解釈していますか。治療後の生存率のエビデンスデータとしてよく目にする「カプランマイヤー(Kaplan-Meier)法」を取り上げ、生存率のデータを正しく理解することを目標に、4つに分けて学習します。
1. 生存率を算出する方法                         

生存率を算出するには

 仮に5年後の生存率を算出するには、本来、薬剤を投与した患者全員について、5年後の生死を把握することができればベストです。
たとえば、観察開始日から5年が経過した症例のみを集計対象とし、その中の生存患者の割合を求めるなど、ある薬剤を投与した患者全員を5年間追跡すればいいのです。このような方法を「直接法」といいます。
しかし、臨床試験では、そのように患者さんをきちんとエントリーし、フォローすることができません。直接法は患者全員が臨床試験の観察開始時に存在していれば適用できますが、とても難しく現実的ではありません。

生存率を算出するときに考慮すべきことがある!

生存率を算出する場合、臨床試験における次のような特性を考慮する必要があります。
  • 試験終了時点で観察を中止し、結論を導く必要がある 
  • 観察開始が同時期でないデータ(=サンプル)がある
  • 観察期間中に観察不可能が生じることがある

 具体的には、以下のような事象が起きます。
  1. 1)臨床試験の観察時期ごとに、しかも各群でn数が全部異なってきます。通常、患者全員が同じ時点から経過観察しているわけではなく、2年前、1年前、あるいはつい先月から経過観察し始めた人もいます。
  2. 2)3年間で経過観察を打ち切った試験の場合、もし、さらに試験期間をさらに1年延ばして4年間にしていたら、観察期間の長い人の中では死亡する人が出るかもしれません。そして、観察期間の短い人は生存している可能性が高くなります。つまり、試験をどこで打ち切るかによって生存率が変わってしまうのです。
  3. 3)試験の打ち切りとは別に、患者によっては観察自体が不可能になる場合もあります。たとえば、交通事故死など試験とは無関係の理由で死亡した場合やその観察患者が別の施設に移った場合、別疾患を併発してプロトコルとは異なる治療をせざるを得なくなって試験を中止したとか、いろいろなケースが考えられます。

 直接法の場合、これら3つによって生存率の値は変化します、言い換えれば、真の生存率を導くことはできません。しかし、カプランマイヤー法を用いると、患者の観察時期が異なっていても、ある一定のルールの中で生存率を推計することができます。

カプランマイヤー法とは?

 イベントが発生するまでの時間を解析する方法で、医学においては生存率を評価するときによく用いられます。
 たとえば、致死的な疾患に対するある薬剤の治療効果をみる場合に、
  • 薬剤投与による生存率の推定
  • 薬剤対薬剤、薬剤対プラセボといった2群間の生存率の差
を把握することができます。

カプランマイヤー法による生存曲線の例

では、冒頭で示したカプランマイヤー法による生存率の評価の例をみてみましょう(本データは学習用に作成した架空データです)。
NYHAclass III以上の重症心不全患者1,251例を対象に、従来の標準治療に加えて、製品
Aまたはプラセボを投与し、36ヵ月間の経過観察を行いました。この臨床試験の目的は、重症心不全に対する薬剤の治療効果を、治療後の生存期間の延びで確認することです。

この図は、製品A群(640例)とプラセボ群(611例)の観察開始から36ヵ月間(3年間)の生存率をカプランマイヤー法で求め、折れ線グラフで表したものです。この折れ線グラフを生存曲線といいます。


この図は、製品A群(640例)とプラセボ群(611例)の観察開始から36ヵ月間(3年間)の生存率をカプランマイヤー法で求め、折れ線グラフで表したものです。この折れ線グラフを生存曲線といいます。


この結果から、製品A群ではプラセボ群に比べて総死亡率が26ポイント減少し、従来の標準治療への製品A群の追加により生命予後の改善がみられたことが読み取れます。

生存曲線の生存率は「累積生存率」

 上図のように、カプランマイヤー法の生存曲線の生存率は累積生存率です。生存率には、期別生存率と累積生存率があることを知っておきましょう。

期別生存率とは

観察から1ヵ月目、2ヵ月目、3ヵ月目の各時期について、製品Aを投与した対象患者数と生存者数が観察された場合、期別生存率は、その時期ごとに、「生存者数を対象患者数で割った値」となります。
たとえば、
対象患者数 1ヵ月目110例、2ヵ月目100例、3ヵ月目90例
生存者数 1ヵ月目110例、2ヵ月目 90例、3ヵ月目72例
であれば、
期別生存率は、1ヵ月目は110÷110で100%、2ヵ月目は90÷100で90%、3ヵ月目は72÷90で80%となります。

累積生存率とは

 観察期間において、対象患者のうち生存している人がどれくらいかを確率で計算したものです。3ヵ月間の累積生存率は、1ヵ月目、2ヵ月目、3ヵ月目も生存していなければならないので、期別生存率を掛け算することによって求められます。3ヵ月間の累積生存率=1ヵ月目の生存率×2ヵ月目の生存率×3ヵ月目の生存率で計算できます。
 仮に、ある人が交通事故に遭って死亡する確率を1ヵ月当たり10%とすると、生存率は90%なので、3ヵ月間で交通事故に遭わずに生存する確率は、90%×90%×90%=73% と計算できるのと同じことです。これは「3ヵ月間の累積生存率」と表現します。先ほどの簡単な事例の3ヵ月間の累積生存率は、100%×90%×80%=72% となります。
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